むかしの道場は床板厚くスプリングを利かせた構造であったが、昨今は一般の体育館などで稽古する例が多く、床板が固いことも膝に悪影響を与える。
前足を高く上げてはならない理由はまだある。前足が高いほど踏み込む距離は伸びないのである。野球に例えれば打球が高く上がったフライは意外に延びずに落ち、ライナーで飛ぶ球はホームランとなるのと同じ道理である。さらに最近わかったことは日本人の骨格にも由来するという事実だ。陸上短距離走でアジア記録を持ち、二〇〇三年のフランス世界陸上競技大会に於いて100米走で日本人初の銅メダル、アジア大会200米の二連覇を達成した末續慎吾選手の走法は膝を高く上げないという点で成功している。従来日本選手がこの種目で外人に勝てなかったのは外国人コーチに習った膝を高く上げて走るということに拘泥していたせいであった。このことの反省から忍者走法のように膝をあげずに速く足を使う走法に切替えたことが成功を生んだのである。それを裏付ける研究で判明したのはレントゲン写真で、白人や黒人の骨盤は前方に傾斜しており膝をあげるほど前へ進みやすく、それと逆に日本人の骨盤は後方に傾斜しているため膝をあげれば重心が後へ引っ張られてブレーキとなる、したがって日本人は膝をあげない走り方のほうが速く走れるのだというのである。このことは剣道の踏み込みにも当てはまるはずである。忍者だけでなく昔から剣道家はそのことを実践していたわけである。 |